意図的再植の治療
2021年02月13日
意図的再植の治療
歯の根っこの中に細菌がおり、根の先に膿が溜まる状態になることがあります。
通常は根の中の治療（根管治療）で治癒しますが、
さまざまな理由で、治療が困難な場合があります。
この写真の患者さんは歯ぐきが腫れ、痛くて噛めない状態でした。
レントゲンを撮ってみると、歯の根っこの先に膿が溜まり、黒っぽく見えます（白矢印）。
でも、なんか様子がヘンです。
別の場所も、少し黒くなっています（赤矢印）。
実は、この部分の根が壊れ、穴が開いているのです。
根に穴が開いた場合、かつては抜歯となる事が多かったようです。
しかし最近では、根に空いた穴を特殊な薬で埋めることで、歯を残すことができるようになってきました。
ただし、それにはいくつかの条件があります。
・比較的小さい穴であること
・根の先端の方ではなく、浅い場所であること
・できれば穴が開いてすぐの状態であること
等です。
残念ながら今回はいずれの条件にも当てはまらず、通常の方法では穴を埋めることが困難でした。
そこで（最後の手段的に）「意図的再植」という治療を行いました。
これは、一度歯を抜いて、お口の外で問題の箇所を治療し、また元に戻すという治療です。
患者さんの同意を得て、慎重に歯を抜くと、歯根に大きな穴が開いていました。
細菌に汚染された部分を除去し（写真）、特殊な薬で穴を埋め、元のように歯ぐきに戻します。
非常に穴が大きく、また根の先端も汚染されており、治癒するか不安があります。
歯ぐきに戻した直後のレントゲン画像です。
細菌のために歯の周りの骨が溶けてしまっており、黒っぽく見えます。
しばらく隣の歯と固定し、治るのを待ちます。
１カ月ほどして状態が良ければ、仮歯をかぶせて噛み合わせの力をかけ始めます。
仮歯をかぶせ、約１年後のレントゲンです。
幸いなことに、歯の周りの骨が回復し、痛みも腫れもなく、しっかり噛めるようになりました。
しかしこの歯はかなり強度が弱くなっているのは明らかです。
これからも慎重に、予後を見ていく必要があります。
意図的再植は、通常の根管治療で治療困難な場合に行う、まれな治療です。
当然、必ず成功するわけではなく、歯の状態によってはそのまま抜歯となる場合もあります。
最後の手段的な治療だと思います。
条件が合えば、保険適用となる場合もあります。
