平安時代の歯医者さん?🦷
2026年06月28日
〜貴族たちも、じつは歯痛に泣いていた〜
「歯が痛い……😭」
このつらさ、現代人だけのものではありません。
レントゲンも、麻酔も、歯を削る機械もなかった平安時代。
それでも、人間に歯がある以上、むし歯も、歯ぐきの腫れも、口臭も、歯の痛みもありました。
では、平安時代の人たちは、歯が痛くなったらどうしていたのでしょうか?
もちろん、今のような「歯科医院」はありません。
白衣を着た歯科医師もいません。
でも、歯や口の病気を診る医療は、ちゃんと存在していました。
『医心方』に書かれていること
その手がかりになるのが、平安時代中期にまとめられた医学書、『医心方』📚
これは日本に現存する最古級の医学書とされ、当時の医療を知るうえでとても大切な資料です。
そして面白いことに、この『医心方』には、歯や口の病気についての記述がいくつも出てきます。
たとえば――
「歯が痛い」
「むし歯で痛む」
「歯が崩れる」
「歯がぐらぐらして抜けそう」
「歯が黄色い、黒い」
「口が臭う」
「歯ぐきから血が出る」
……あれ?これ、今の歯科医院でも聞くお悩みにかなり近いですね😳
平安時代の歯の治療法とは?
つまり平安時代の人たちも、私たちと同じように悩んでいたわけです。
ただし、治療法は現代とはまったく違います。
今なら、むし歯を削って詰め物をしたり、神経の治療をしたり、歯周病なら歯石を取ってプラークコントロールをしたりします🪥
でも平安時代には、そうした現代的な歯科治療はありません。
当時の治療は、
- 薬を飲む
- 薬を塗る
- 膏薬を貼る
- 針を刺す
- お灸をする
- 患部を焼く
といったものが中心でした。
……「焼く」!?🔥
今の感覚で聞くと、かなり怖いですね。
でも当時の医学では、痛みや腫れは「体の中の悪いもの」や「気や血の乱れ」などとして考えられていました。
だから、薬や針やお灸で、体のバランスを整えようとしたのです。
そして、どうにもならない歯は、やはり抜くしかなかったでしょう。
ここで大事なのは、平安時代の人たちが「歯の病気を何も知らなかった」わけではない、ということです。
むしろ、歯の痛み、むし歯、歯のぐらつき、口臭、歯ぐきからの出血などを、かなり細かく観察していました。
現代の歯科医療から見ると治療法は未熟でも、症状を見つめる目はなかなか鋭かったのです👀
お歯黒!
もう一つ、平安時代の歯で面白いのが、お歯黒です。
現代では「白い歯」がきれいだとされます✨
ところが平安時代の貴族社会では、歯を黒く染めることが、成人のしるしや身だしなみ、美しさの表現になっていきました。
今の感覚では、ちょっと不思議ですよね。
でも、美しさの基準は時代によって変わります。
現代人がホワイトニングをするように、平安貴族は歯を黒く染めていたのです。
ここに、少し面白いねじれがあります。
『医心方』には、歯が黄色い、黒い、口が臭う、といった病気の記述があります。
一方で、貴族文化では、歯を黒く染めることが美しさや成人のしるしになりました。
つまり、同じ「黒い歯」でも、病気としての黒さと、文化としての黒さがあったわけです。
歯は、食べるための道具であると同時に、見た目や身分、年齢、礼儀作法にも関わるものだったのですね。
いつの時代も人間は一緒
平安時代の人たちは、現代のような歯科医療を持っていたわけではありません。
むし歯を精密に削ることも、根管治療をすることも、歯周病の原因菌を理解することもできませんでした。
それでも、歯の痛みに苦しみ、口臭を気にし、歯ぐきの出血に悩み、歯の見た目を整えようとしていました。
そう考えると、千年前の人たちは、決して遠い存在ではありません。
宮中で和歌を詠んでいた貴族も、きらびやかな装束をまとった姫君も、もしかすると夜中に歯痛で眠れなかったかもしれません🌙
「歯が痛い」
この一言だけで、千年前の人と現代の私たちは、意外なほど近くなります。
おわりに
歯科の歴史を見ると、医療の進歩だけでなく、人間の暮らしや美意識まで見えてきます。
平安時代の歯の治療は、今から見ると怖く、頼りなく、少し不思議です。
でもその奥には、痛みをなんとかしたい、きれいに見せたい、健康でいたい、という人間の変わらない願いがありました。
歯の歴史は、ただの医療の歴史ではありません。
人がどう生き、どう装い、どう苦しみ、どう治そうとしてきたかの歴史でもあるのです🦷✨
ちなみに現代では、歯の痛みは我慢するより、早めに原因を調べることが大切です。
平安貴族のように祈ったり焼いたりする前に、まずは歯科医院へご相談くださいね🦷
参考文献・参考資料📚
この記事を書くにあたり、以下の資料を参考にしました。
・丹波康頼『医心方』
平安時代中期にまとめられた、日本に現存する最古級の医学書。歯や口の病気についての記述も見られます。
https://emuseum.nich.go.jp/detail?content_base_id=100173&content_part_id=0&content_pict_id=0&langId=ja&webView=
・長崎県歯科医師会「日本最古の医書とされている『医心方』」
『医心方』に記された歯の病名や、薬物療法・膏薬・針・灸・焼灼などの治療法について紹介されています。
https://www.nda.or.jp/study/history/isinkata
・日本歯科医師会「お歯黒について」
平安時代の貴族社会に広がったお歯黒の風習について解説されています。
https://www.jda.or.jp/park/knowledge/index04.html
・日本歯科医師会「歯科医学の進歩と歴史」
古代から近代にかけての歯科医学・口中科の流れを概観する資料です。
https://www.jda.or.jp/park/histry/index11.html







