インプラント治療を、私が受けました
2026年10月12日
30年近く前のことです。
私は歯科大学に通う学生で、むし歯ができてしまいました。
歯科大の学生なのに?と思われるかもしれませんが、卒業して歯医者さんになるまでは、少し歯に詳しい普通の若者です。
左下の奥歯に大きな大きなむし歯を作って、痛くて仕方ない状態になってしまいました。
帰省時に、父に治療をしてもらいました。
今は亡き父ですが、丁寧に治療をしてくれました。
悪くなってしまった歯の神経をきれいにお掃除して、薬を詰め、被せ物をしてもらいました。
それから約30年、なにごともなく経過していました。
ところが昨年の冬、あることに気が付きました。
その歯の近くの歯ぐきが、腫れていたのです。
いまはもう歯に詳しいおじさん(つまり歯医者さん)になった僕は、瞬時に理解しました。
「ついに、治療した歯が悪くなる時が来たのだ」と。
歯の治療は、永久に良い状態を維持してくれるわけではありません。
詰めた薬は徐々に劣化します。
接着剤のセメントは溶けてはがれていきます。
かぶせ物はすり減っていきます。
そして、神経を取って弱くなった歯は、割れてしまうことがあります。
そうです、僕の奥歯は、割れてしまったのです。
その亀裂からばい菌が入って、歯ぐきの内側に膿がたまり、歯ぐきが腫れたのでした。
残念ながら、こうなると歯を助けることはできません。
抜歯です。
日頃、患者さんの歯を抜いている立場の僕ですが、歯を抜くときの寂しさや残念さを、思い知ることになりました。
さて、奥歯が一本無くなると、これは大変不便です。
物が食べにくいのです。
「やっぱり歯があった方が良いなあ」
そう思いました。
そこで、勤務医の先生に、インプラント治療をしてもらうことにしました。
インプラントは、人工の歯を歯ぐきに植える治療です。
うちの勤務医の先生はとても優秀で、インプラントの植込み手術も、その術後も、全然痛みも腫れもなく、治療はすんなりと進んで行きました。
そしてついに、被せ物が入りました。
まだ仮歯ですが、無くなった奥歯が戻ってきたのです。
僕は患者さんから、「歯が入って嬉しい」というお言葉を聞くことがありましたが、僕自身が同じことを思いました。
歯が入るのって、嬉しいですね。
さっそく食事をとってみます。
インプラントは、しっかり噛めるだろうか。
最初は恐る恐る、ゆっくり噛んでみました。
噛めます。しっかりと。
次に、あまり意識せず咀嚼をしてみます。
何の不具合もありません。
いつの間にか、インプラントが入っていることも忘れて、僕は食事を楽しんでいました。
僕は歯医者さんとして、患者さんにたくさんのインプラント治療をしてきました。
インプラントという治療がどういうもので、どういうメリット・デメリットがあるのかも、もちろん勉強してきました。
ですが今回、実際に自分が患者さんになって、インプラント治療を文字通り実感しました。
入れ歯のように出し入れをする必要がなく、ブリッジのように周りの歯を削る必要もない。
インプラント治療とはやはり画期的なものだと実感しました。
もちろん全ての患者さんにインプラントが最適なわけではありません。
僕の場合は、幸いにもインプラント治療が合っていたのでしょう。
よく噛めて、美味しく食べられることの大事さ。
自分が患者さんの立場になってみて、分かることがたくさんありますね。







