歯にまつわる言葉、実は奥が深い!
2025年05月19日
「歯に衣着せぬ」「歯がゆい」「歯の浮くようなセリフ」…。
日常でよく耳にするこれらの言葉、みなさんはどんな意味かご存じですか?
実は、こうした“歯にまつわることわざや慣用句”には、昔の人の感覚や身体のイメージが深く関係しています。
今回は、そんな「歯ことば」の世界を、ちょっと楽しくのぞいてみましょう。
「歯に衣着せぬ(はに きぬ きせぬ)」
意味:思っていることを遠慮せずにはっきり言うこと。
由来:「歯に衣服を着けることをしない」、つまり「歯を隠さない」ということから、そのままハッキリとズバリ言う、という意味になったそうです。
ちなみに、歯科的には歯に色々なものを被せたりしますので、衣を着た歯も結構ありますね(笑)
「歯がゆい」
意味:もどかしくてイライラする、焦ったい気持ち。
由来:
説①「歯がうずくような不快感」や「歯の奥がむずむずする感じ」から、「もどかしくてイライラする」という意味になった。
説②「歯はかゆくても、掻くことができない」ことから、「もどかしくてイライラする」という意味になった
→ 由来はハッキリしていませんが、上の二つが説としてあるそうです。
ちなみに、実際に歯ぐきに炎症があると「歯がかゆい感じがする」とおっしゃる患者さんもおられます。
「歯の浮くようなセリフ」
意味:気持ち悪くなるような、お世辞や甘ったるい言葉。
由来:くすぐったいような、鳥肌が立つような気持ちの悪い感覚を「歯の浮く」という身体の感覚に例えています。
歯科医からすると、「歯が浮いた感じ」の時は、たいてい歯周炎です(笑)
「舌先三寸」
意味:口先だけのうまい話。言葉だけで人をだますことも。
由来はよく分からないようですが、昔は「舌三寸」と言ったそうです。三寸はだいたい9センチメートルですから、日本人の平均的な舌の長さ(7センチメートル)より少し長いですね(笑)
おそらく、三寸程度の舌の先だけで、物事をうまく進めようとする(言葉だけで済まそうとする)という意味なのでしょう。
私のような歯科医も、「舌先三寸」ではなく、心のこもった誠実な説明をしなければ。
「目には目を、歯には歯を」
意味:やられたら同じ方法で仕返しをする、という報復の原則。
由来:古代バビロニアの「ハンムラビ法典」に由来する有名な言葉です。
もともとは、「やられたこと以上の報復をしてはいけない」という意味で、正義や公平を象徴する言葉なのですが、現代では「やられたら同じだけやり返していい」という意味で使われることが多いですね。
時代とともに意味が変わってしまうのも、言葉の面白いところです。
「ごまめの歯ぎしり」
意味:力のない者が不満を言っても、相手には届かないというたとえ。
由来: 「ごまめ」とは、いわしなどの小魚を干した食材で、非常に小さく弱い存在をあらわしています。そんな小さな存在が歯ぎしりしても、大きな相手には何の影響もない…という自虐的な表現です。
昔、あるテレビドラマで「正しいことをしたければ、偉くなれ」というセリフがありました。
この「ごまめの歯ぎしり」という言葉も、悔しがって文句を言うばかりでなく、自分がもっと影響力を持てるように実力をつけなさい、という意味なのかもしれませんね。
ただ、実際の「歯ぎしり」は自分の歯には大きなダメージを与えることもありますので、もし心当たりがあれば一度ご相談ください。
ことわざや慣用句には、私たちの「身体感覚」がたくさん反映されています。
とくに「歯」は感覚が敏感ですから、繊細な違和感や気持ちの揺れを表すのにピッタリだったのかもしれません。
歯や口の感覚を大事にすることは、むし歯や歯周病の早期発見にもつながります。
言葉の面白さを楽しみつつ、「あれ?なんかおかしいな」と感じたら、どうぞお気軽にご相談くださいね。